2018年1月30日火曜日

金博洋の復調と坂本花織の健闘:F.S.四大陸選手権2018より




怪我のためGPファイナル戦と中国選手権を欠場し、この大会に出場してきた金博洋(ボー・ヤン・ジン.中20歳)は、
ほとんどノーミスで全てのジャンプを決め、世界選手権連続3位(2016/2017)の実力と復調ぶりを見せて優勝した。
画像はISU.HPより。



今回の四大陸選手権男子シングルで際立ったのは、金博洋の復調とジャンプの成功だった。GPアメリカ杯FSでは、

4回転3本を含む8本のジャンプ(Coを含む)を飛んだが、回転不足やミスが5本あり得点が伸びなかった。何か足の故障

でもあるのか? と思ったが、やはりそうだった。しかし調整が上手く出来た今回の試合では、SP/FS計11本のジャン

プのほとんどを成功させ(3Lz+2TのみGOEマイナス)、しかも最高難度の4LzはGOE+2.71で計16.31を獲得している。

恐らくジャンプを集中的に調整してきたと思われる成果だが、その分ステップやスピンはレベル4を演技しながらも

GOEは伸びず、また芸術点(プログラム・コンポーネンツ)はすべて8点台で、ほとんど9点台を叩きだした宇野昌磨に

は及んでいない。FSのEL(エレメント・スコア)で10点近い差を付けられたのは、金博洋陣営の作戦勝ちで、この試合

での復帰の要点をジャンプに絞り、その後の平昌オリンピックと世界選手権を見据えたステップを踏んできた狙いが

私には見て取れた。前哨戦を300点越え(300.95)で終えた金博洋には、弾みが付いたように思う。


一方、ジャンプに転倒やミスはあっても大崩れしない宇野昌磨の試合運びは、リカバリー能力の高さも加えて、なか

なかしぶとい選手になってきたなぁ、という実感がある。今季(2017~2018)のGP戦などの国際大会では、カナダ杯の

SP/FS計301.10と今回の計297.94の得点を見ると、コンスタントに高得点を獲得するレベルに居るし、芸術点のレベ

ルも常に高得点を出している。今後の2大会の勝敗は、まさにジャンプの構成と出来栄えに掛かっていると思う。こ

の点ではオリンピックぶっつけ本番のソチ金メダリスト羽生結弦や、今大会を回避した全米選手権2018覇者のネイサ

ン・チェン、そして欧州選手権6連覇のJ.フェルナンデスとカナダ選手権2018覇者のP.チャンも同じだろう。4回転を

含む10~11本のジャンプを如何に出来栄え良く成功させられるか? 1本のミスとステップ・スピンの取りこぼしが明暗

を分けるだろう。ここに、今回優勝の金博洋も割って入ってきたから、2大会の300点台を巡る攻防がとても楽しみに

なっきた。



四大陸選手権2018の表彰台は、金博洋(ボーヤン・ジン中20歳)が金メダル、宇野昌磨(日19歳)が銀メダル、
ジェイソン・ブラウン(米22歳)は健闘して銅メダルだった。滑らかでしなやかな滑走と、多彩な表現で観客席を
一番沸かせたのはJ.ブラウンだった。彼のショーマンシップは、プロ選手としても大いに活躍できるだろう。





坂本花織(日17歳)の優勝は大健闘と讃えられる。筋力系のバネがある体型から繰り出すジャンプはスビードが
あり高さも充分だ。足指の痛み(魚の眼とか)も克服して、見事チャンピオンとなった。


今回の四大陸選手権女子シングルは、欧州勢(ザギトワ・メドベデワ・コストナー・ソツコワ等)とアメリカ・カナダ

勢(B.テンネル・長洲未来・カレンチェン・デールマン・オズモンド等)の有力選手が出場してこない試合だったので、

色々割り引いて見なければいけない。でもその中で、日本女子表彰台独占は快挙だった! 久しぶりに見る日の丸3本

上りは大いに讃えられるべきことだろう。坂本花織の良さは、バランスの取れた演技だ。ジャンプにほとんどミス

がなく、しかもGOEでよい出来栄え点を得ているのが強みだ。まだ高難度の3LzのCo(3Lz+3Tなど)が入っていない

ので、今後の伸びしろも見込める。また、ステップ・スピンのPC(演技構成点、芸術点とも言う)を磨いていくことも

今後の課題だと思う。今季大いに成長した勢いを今後の2大会でも見せて欲しいものだ。




四大陸選手権2018の表彰台は、坂本花織(日17歳)が金メダル、三原舞依(日18歳)が銀メダル、宮原知子(日19歳)が
銅メダルだった。坂本花織の成長振りが大きな話題となる一方、ジャンプにミスが多く出て3位に沈んだ宮原知子は
涙を流してオリンピックでのリベンジを誓った。三原舞依も復調して2位に上がったがジャンプ・ミス(3Lz)の回転
不足が明暗を分けた。



女子選手のジャンプ演技を見ると、現役選手で4回転ジャンプを飛ぶ選手は居ないが、3Aは長洲未来(米24歳)が国際

試合でも成功させているし、紀平梨花も国内大会での成功事例がある。ジャンプ演技の難易度から言うと、Coの

3Lz3Lo(ザギトワのみ)・3Lz+3T3F+3Tなどが各国選手の構成だが、これらのジャンプを如何にミス無くまた

出来栄え良く(加点を得て)跳べるかが勝敗の分かれ目になるだろう。また、他のジャンプやステップ・スピンに磨き

をかけて、技術点を得られるレベル4の演技とP.C.(演技構成点)をどれだけ上げられるかが、表彰台で讃えられる

分かれ目になると思う。

230点台を出してくるロシア勢のレベルはとても高いだろうが、試合では何が起こるかわからないのが常だから、オリ

ンピックあるいは世界選手権に向けて調整のピークをそこに持って行き、日本選手が大いに健闘することを期待し

たい。しかし、とんでもないハイレベルの戦いになることは避けられないだろう。ジャンプの採点にウェイトを置く

現行の採点基準からすれば致し方ないことではあるが、テーマ曲に乗ったフィギュア・スケーティングならではの

総合的な世界観と技術的表現をもっと見たいと思うファンも多いと思う。何本飛んだというような記録的な結果より

も、心に響く素晴らしい記憶を残してほしいものだ。やや゛荒っぽい゛試合運びよりも、しなやかで美しいスケー

ティングをもっと見られるように、採点基準の見直しも今後の大きな課題だと思う。


<略語内容>
F.S.:Figure Skate フィギュアスケート ▢ ISU:International Skating Union 国際スケート連盟  SP:ショート・
プログラム  FS:フリー・スタイル  6種類のジャンプ A:アクセル Lz:ルッツ F:フリップ Lo:ループ S:サルコウ
T:トゥループ ▢ FCSp:フライングキャメル・スピン ▢ LSp:レイバック・スピン ▢ CCoSp:チェンジフット・
コンビネーション・スピン ▢ StSq:ステップ・シ―クェンス ▢ GP:グランプリシリーズ戦 ▢ P.C.:Program Components
(演技構成点) ▢ EL:Element Score(技術点) ▢ Co:コンビネーション・ジャンプ ▢ GOE:各演技の出来栄え点(+3
から-3までのジャッジ平均点)


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