第5回 Zaz 「Je veux」その2. Jazz Manouche の由来

 


Zaz à Montmartre Les passants

デビューアルバム『Zaz』2010年収録の「Les Passants」(通り過ぎる人々:Isabel Geffroy作詞・作曲)のストリートライブ・バージョン。典型的なアコースティック・スウィング・スタイルでギターのリズムも”La Pompe”を刻んでいる。乗りのいいZazのアドリブ・ヴォーカルが素敵だ。歌詞も思索に満ちたZazの世界、歌いながら身体も”Swing”しているのがZazらしい。上のタイトル全体を指定・右クリックすると動画が見られます。


Zazの本名はイザベル・ジュフロワ( Isabel Geffroy)、従って作詞・作曲の著作者表示は本名となる。1980年フランス・トゥール生まれ。

2006年パリのピアノバーで、歌手として夜11時から朝4時までマイクなしで歌う生活を送る。ジャズ、ブルース、シャンソン、ラテンなど、多様なジャンルの曲を歌い、その後モンマルトルの街頭でストリートミュージシャンを始めると、常に多くの人が立ち止まり、彼女の歌に耳を傾けるようになる。〈Warner Music Profileより〉


この音楽履歴から見えてくるのは、メジャーデビュー前の長い助走期間(所謂”下積み”)だ。ピアノバーでの弾き語りで自分の歌とピアノ演奏を修練し、その後のストリートライブでメンバーたちとの音楽交流(session)を深め、自作の曲も数多く作った後の30歳(遅咲き!)でのデビューだった。そう言う意味では、しっかりと実力を蓄えてからのスタートだった。だから、プロの作詞家や作曲家の作った歌に乗って、1960年代のアイドル路線(Yé-Yé)を走った若い(10代の)女性歌手たちとは全く違った経歴を持っているのだ。



https://youtu.be/eJ1LTF6yRpg

YouTubeを検索していたら、2012年の京都大徳寺ライブ(TBS放映)の「Les Passants」動画があった。珍しいのでどうぞご覧あれ。タイトルを指定右クリック。


自らの芸名を「Zaz」と名付けたのには、よほど深い「Jazz」への思いがあったのだろう。(でも、もしかしたらふとした思い付きからかも知れないが...)


Jazz Mnoucheのルーツをたどってみると、1930年代アメリカで全盛期だったスウィングジャズ(Swing Jazz)に行きつく。ジャズの歴史をたどるととてもこのページでは書き切れないが、凡その流れは以下の通りだ。(☆は代表ミュージシャン達)

★誕生(ニューオールリンズ期)・デキシーランド・ジャズ 19世紀末~20世紀初め。黒人音楽(ブルース)がルーツ、アフリカのリズムとヨーロッパの楽器とが融合したハーモニー ☆ルイ・アームストロング                      

★スウィング・ジャズ(ビッグバンド=大編成の時代) 1920年代後半~1940年代前半(大恐慌後の繁栄~第二次世界大戦終了) 踊るための陽気な音楽として大流行 ☆デューク・エリントン / ベニー・グッドマン / グレン・ミラー / カウント・ベイシー

★ビバップとモダン・ジャズ 1940年代~1960年代 踊る音楽から高度な演奏を楽しむ芸術的な音楽へー長い即興演奏(インプロビゼーション) アメリカンポップスのメロディをジャズ化 ☆マイルス・デイビス / ソニー・ロリンズ / ビル・エヴァンス

★コンテンポラリー・ジャズ(現代の多様化したジャズ) 1960年代~現代 クールジャズ・モードジャズ・フリージャズ ロックやファンク・電子音楽との混じり合い(Fusion) 今後も進化続けていく。 〈copilotの分類による〉


マヌーシュ・ジャズは、当時(1930年代)世界中で流行していたこのスウィング・ジャズを手本にして、ロマ民族(ジプシー)にルーツを持つミュージシャン達によって独自のスタイルで演奏された音楽スタイルだ。スウィングジャズはフルバンドの楽器編成、つまりリズム楽器(ピアノ・ギター・ドラム・ウッドベース)とフロント楽器(ブラス:トランペット・トロンボーン、サックス: ソプラノ・テナー・アルト・バリトン、木管など(フルート・クラリネット・オーボエ・ハモニカ・ビブラフォンなど)が加わるので20人以上のビックバンドとなる。

しかるに、ロマ民族の人々はキャラバン(幌馬車)で移動しながら、”定住しない”・”電気もない”・夜は焚火を囲んで食事とセッション”と言う暮らしだから、大きな楽器(ピアノやドラム)や多様な種類の楽器など望むべくもない。従って、小型のアコースティック楽器でできる音楽スタイルとなるのだ。時にはバイオリンやクラリネットも加わるが、基本的に複数のギター中心でリズムとソロ弾きを奏でるスタイル。同じロマ民族にルーツをもつ「フラメンコ・ギター」に見られるように、圧倒的なリズム感と超絶的な速弾きが特徴だ。軽やかで哀愁を帯びたメロディーも聴く人のハートを惹きつける。

スウィング・ジャズの音楽表現スタイル〈曲のメインテーマをソロ楽器が演奏 ー 幾つかのパート楽器がそのコード進行に乗ってアドリブ演奏を続け ー 最後にテーマに戻って全員で演奏〉、この〈 起 ー承・転 ー結 〉のジャズスタイル(スウィングやビバップ)をロマ民族の楽器で演奏するスタイルが 「ジャズ・マヌーシュ」だと言えよう。


〈 この項続く〉 


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