第5回 Zaz 「Je veux」その4. 仏語歌詞内容は、" Réalité (ありのまんま) " だ!

 

Jaz のデビュー曲「Je Veux」の仏語歌詞(1部)を以下載せます。音楽ライターの十川ジャンマリーさんも言っているように(ブログ”パリの散歩道~”)、フランス人ミュージシャンには「訳詞」と言う概念がなく、他の国(フランスにとっての外国)の歌曲をカバーするときは、メロディーラインはそのままで、仏語はあくまでもオリジナルな内容とすることが多い。つまり、訳詞と言うよりは”アレンジして新しい歌詞を創る”と言う感覚なのだろう。


前回(第4回 Comment te Dire adieu  のシェルジュ・ゲインスブール)の仏語詞でも、原曲の英語詩とは全く違った歌詞を彼は作った。実際に著作者の表示には、ゲインスブールは「Adapter 」(翻案者・編曲者)とされている。マーガレット・ホワイトニングが歌う元歌は、”愛した男を諦めきれない女の切ない思い”を歌い上げる〈ジャズ・バラード〉だった。しかるに、フランソワーズ・アルディが歌う仏語版は、ビートの効いたボサノヴァ・アレンジのリズムと「なぜ私とわかれるの!? 良く説明してよ!」と愛した男に迫る女ー別れを受け止めきれない女の”とまどい”がテーマになっている。だから、「なんてさよなら言ったらいいの!?」という題名が生きているのだ。日本で発売されたこのCDのタイトルは「さよならを教えて」だが、日本版の曲名付けや訳詞によくある例で、的を得ていないと言うか、寝ぼけていて意味がよく解らない曲名と言われても仕方あるまい。映画や音楽に限らず、この手の話は多い。


話が横道にそれた。「Je Veux」の日本語訳詞を全部見たい方は、以下のブログを参照してください。ここでは、1番とRefrainの凡その歌詞内容を載せます(Jovial TAKA訳)。

朝倉ノニーの<歌物語> | ジュヴーJe veux


 Donnez-moi une suite au Ritz, je n'en veux pas                                      

Des bijoux de chez Chanel, je n'en veux pas

Donnez-moi une limousine, j'en ferais quoi ? (Pa-pala, pa-pa-pala)

Offrez-moi du personnel, j'en ferais quoi ?

Un manoir à Neuchâtel, c'n'est pas pour moi

Offrez-moi la Tour Eiffel, j'en ferais quoi ? (Pa-pala, pa-pa-pala)

(Cha-lapapa-dapa-papa-lapa-lapa-ladee-dada-papa)

 

Je veux d'l'amour, d'la joie, de la bonne humeur                                           

C'n'est pas votre argent qui f'ra mon bonheur

Moi, j'veux crever la main sur le cœur (Pa-pala, pa-pa-pala)

Allons ensemble, découvrir ma liberté

Oubliez donc tous vos clichés

Bienvenue dans ma réalité

 

 ホテルリッツのスイートルームなんて、ごめんだね

 シャネルの宝石も、要らないよ

 リムジン、そんなもの私にどうしろっていうの?〈Pa-pala, pa-pa-pala〉

 家政婦をくれるって、そんなもん要らないよ 

 ヌーシャテルの大邸宅、私には向いてないね

 エッフェル塔をくれるって、そんなもんどうするのよ?〈Pa-pala, pa-pa-pala〉

 〈 Scat  ~〉

 私が欲しいのは、愛・喜び・ご機嫌よ

 私を幸せにするのは、あんたのお金じゃないのよ

 私はね、胸に手をあててくたばりたいのよ〈Pa-pala, pa-pa-pala〉

 一緒に行こうよ、私の自由を見つけに

 あんたの紋切り話は止めてね

 おいでよ、ありのままの私の世界へ ~ ~ ~



https://youtu.be/oqpFCueZBaI

Je veux Zaz Espanol 2015 の動画です。バックバンドと共に歌い踊るZazの元気な姿が、会場の聴衆と一体になった素晴らしいライブです。画像はGetty Imagesより、タイトル右クリックで見られます。


マヌースジャズの切れのいいリズム(La Pompe)に乗って、身振り・手振りで身体を動かし、アドリブで自由・自在に歌うZazのパーフォマンスは、聴く人々のハートを鷲つかみにする。歌詞も気軽に話すように、お喋りするように、自らの信条を伝えている。「シャネルもリムジンも、そんなものは要らないよ!欲しいのは、愛と喜び、 ma réalité! 」という言葉は、ストレートに若者(だけでなく多くの人々)の心に響いてくる。


『文芸別冊 阿久悠 総特集』(2017年河出書房新社刊)の中に、「阿久悠作詞家憲法十五条」が記載されている。作詞家としての戒め・モットーを記したものだが、その十五番目に次の文章がある。

 15. 歌は時代とのキャッチボール。時代に中の隠れた飢餓に命中することが、ヒットではなかろうか。(下線TAKA)

ソルタニの書いた歌詞・Zazが唄った歌は、その時代の人々の乾いた心に染み込むような美味しい水を提供する状況を創り出し、曲のヒットと世界への拡がり・今に続くジャズ・スタンダードとして愛される歌となった。

〈 この項続く 〉


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