第5回 Zaz 「Je veux」その3. ジャンゴ・ラインハルトとフランス・ホットクラブ・五重奏団

 


ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)が率いた「フランス・ホットクラブ・五重奏団」(Quintette du Hot Club de France)、相棒のヴァイオリニスト:ステファン・グラッペリ(Stéphan Grappelli)〈向かって左端〉と共にヨーロッパ・アメリカでマヌーシュジャズの演奏活動を続けて人気を博した。 Getty Images 1934 

https://youtu.be/uTlo809EIlo

上のタイトルを指定・右クリックすると、彼の代表曲「Miner Swing」(2人の共作・1937年パリ録音)の動画が見られます。


ジャンゴ・ラインハルト(1910~1953年)はロマ民族(ジプシー)出身のギタリストで、ロマ音楽とスウィングジャズ(当時世界的に流行していた)を融合させた「Jazz Manouche」の創始者として知られている。キャラバンでの移動生活の際、「1928年の10月26日未明、ジャンゴはキャラバンの火事を消そうとして、半身に大やけどを負う。その結果、彼の右足は麻痺し、左手の薬指と小指には障害が残った。彼を診察した医師がギターの演奏は二度と無理だと思うほどの怪我であったが、ジャンゴは練習によって独自の奏法を確立し、ハンディキャップを克服した。」(Wikipedia)

相棒のステファン・グラッペリ(1908~1997年)はパリ生まれのジャズ・ヴァイオリニスト、ジャンゴとコンビを組んで(一時単独活動)、数々の名演奏を残している。2人が中心となって結成した「フランス・ホットクラブ・五重奏団」では、「Miner Swing」・「Djangology」・「Nuages」などの代表曲の演奏が残されている。


この楽団の編成は、ジャンゴのギターとステファンのヴァイオリンを中心に、ウッドベースがルイス・ヴォラ(Louis Vola)・リズムギターがロジェ・シャプー(Roger Chaput)とジョセフ・ラインハルト(Joseph Rainhardt ー ジャンゴの弟)の五人。スウィングジャズのドラム・ピアノがなく、ブラス(金管)バンドもいない。少人数のシンプルな楽器編成だ。使用したアコースティック・ギターはすべてセルマー(SELMER)製だった。セルマーはボデーのカッタウェイと卵型あるいは横長D型の大きなサウンド・ホールを持つ(D型はMaccaferriと呼ばれる)ギターだった。演奏音の歯切れがよく、硬質で高い音抜けと音量を実現するこのギターから、超絶技巧と速弾きのギターソロが生まれ、シンプルだが力強い「La Pomp」のリズムがバックを支えるサウンド : ジャズ・マヌーシュが創り出された。



ジャンゴが愛用したセルマーのアコースティックギター(画像はDjango Reinhardt.comより)。そしてヒット曲「Djangology」は、フランス・ホットクラブ・五重奏団の演奏による(1949年イタリアで録音・1961年リリース)。ジャンゴは1953年急死したため、この演奏が彼と長年の相棒ステファンとの最後の共演となった。下のタイトルを右クリックして動画を視聴してください。 

https://youtu.be/DVa3EDKUSH0


もちろんヴォーカルなしのインスツルメンタル、ジャンゴのギターソロとステファンのヴァイオリンソロが掛け合い、リズムギターとベースが通奏低音(伴奏)を奏でる。その間にテーマメロディはアドリブで千変万化して行き、最後にテーマを演奏して終える。このジャズ・マヌーシュの演奏スタイルは、フランス・ヨーロッパで人気を博し、後のジャズ・ミュージシャン達に大きな影響を残した。アメリカのスウィングジャズに匹敵するヨーロピアンジャズの人気は、現在も続いている。


私自身はパリに住んでいる訳ではないので詳細はよく分からないが、Jazz Manouche を聴くことができるライブハウス・ミュージックホールなどを調べてみると、パリとパリ周辺地区では60数店舗の紹介が載っていた!〈yelp〉と言う生活情報サイトに「Top 10 Best Jazz Manouche Near Paris, Paris」なる記事で、店舗の写真・営業時間・食事/バーの有無などが載っている(日本の"食べログ"音楽版みたいな)。店舗のホームページにも直接アクセスできるのでこれは便利だ。

「This is Paris」と言う日本の旅行サイトでも、「パリのナイトライフで音楽を楽しむには、ジャズ・マヌーシュとミュゼット(Musette)がお薦め!」と案内されているのを見ると、ジャンゴの創り出したジャズを若いミュージシャン達が継承し、カフェからはマヌーシュジャズが流れ、毎夜のようにライブハウスでジャズライブが開催されている、これが今のパリの音楽シーンのようだ。今も毎年、ジャンゴの音楽フェスティバルが開催されているが、会場はジャンゴが愛した(釣りが大好きだった!)セーヌ川中州からフォンテンヌブローに移されているとのこと。ジャズマヌーシュの生みの親の音楽は、確実に次世代に継承されている。



ステファンの晩年の画像、ジャンゴ亡き後も精力的に演奏活動を続けた。1980 Getty Images  軽やかで哀愁を帯びたステファンのヴァイオリンと、ロマ節が炸裂するようなジャンゴのギターが一体となったジャズ演奏は、当時のジャズファンを大いに魅了し続けた。


〈 この項続く 〉


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