2016年5月20日金曜日

第25回浜美展を見て


 
『Saturday night(椿)』(油彩F25・HIさん作):土曜日の夜にとあるお店に集まって音楽を楽しむ人たちを描いた佳作、
中央で歌詞コピー片手に歌うはこの店の主人SHさん。 All Photo by TAKA


「アートフォーラムあざみ野」(東急田園都市線あざみ野駅近く)で、「第25回浜美展」が開かれているとの案内をいただき、

出かけてみた(5月16日)。毎年この時期に開かれるグループ展を目指して、今年も会員36人の145作品が出品されていた。

広い会場には、会員一人当たり2~数点の作品が展示されていて、油彩・水彩・パステルなどの技法で描かれた作品はサイズも

F4~F100までと様々(さすがにF100の大作は少なかったが)、色々な個性の絵画を見られて面白かった。

HIさんの描いた人物画『Saturday night(椿)』は、私の地元(世田谷区喜多見)の椿珈琲店で毎週土曜日の夜に開催している

「どようかい」をテーマに、集って音楽を楽しむメンバー達と店主SHさんをモデルにしたものだが、お馴染みのメンバーを

彷彿とさせる姿も組み込まれている。画面右のトランペット吹き・フルート吹き・ギター弾き(二人)・ピアノ弾き・手叩き人・

歌詞読み人...見る人が見ればそれぞれ「あっ、だれちゃんだ!」と解ってしまう位良く描けていて感心してしまった。また、

画面左には、一人足組してギターを弾く故マスターの姿が入っているのだ。この3月に急逝されてしまったが、本人もまさか

油彩に描かれるとは思ってもいなかっただろうから、今頃天上で苦笑いしているかもしれない。中央には紫色ワンピース姿の

SHさんが立っているが、以前絵の取材にどようかいへ行くことを伝えておいたとき、我々の前にワンピースで登場し一曲歌った

SHさんそのままで、「気合入ってるね~!」と大いに感心したものだった。画面から、歌い演奏し手拍子を取って楽しむメンバー

達の熱気とくつろぎが伝わってくるいい作品になったと私は思っている。かくいう私も、画面右に座っているギター弾き

して登場させてもらった。一昨年の浜美会には、私がモデルになった『コルコヴァード』(ボサノヴを弾き語りするギター

弾きと街風景)というタイトルの作品をHIさんが描き出品されたが、この作品はその後の横浜地区の絵画展で入選するという

おまけがついた。音楽を楽しむ人をテーマとしては2作品目だということだが、なかなか賑やかで楽しい画面からは音楽が

聞こえてきそうだ。




HIさんのコーナーには他に2作品が展示されていた。青い花を描いた『アジサイ』(油彩F6・左)と、清里の風景を
描いた『蜻蛉とオミナエシ』(油彩F15・右)、テーマも色合いも違うがそれぞれ雰囲気のある力作だった。




『ヌード』(油彩F20・OTさん作)は、画面全体の色が柔らかなベージュ、木の葉や木・椅子も同じ色調で、
中心にいる後姿の裸婦が画面に溶け込むような雰囲気があって良かった。


会場の1階がグループ展、2階がこの会の代表者(福島澄香さん)の個展という構成だったので、ぐるぐると回遊して沢山の

作品を見て廻った。その中で私の目に付いたものをちょっと紹介してみたい(あくまで個人的な感想ですが)。



100号Fの大作『紅葉のせせらぎ公園』(仮題・福島澄香作)、池脇の紅葉と池面に映り込む樹影を描いた風景画。
抽象表現に高められた筆のタッチと色のボリュウムが心地よい。この日見た作品の中では私の一押しです。



やはり100号の大作『新緑のせせらぎ公園』(仮題・福島澄香作)、新緑の時期に同様の池を描いた風景画。後方の樹影と
池面に映り込む新緑のグラデーションと様々な色合いがとても爽やかだ。




油彩100号の大作『イリュージョン』(松田高明作)、この会を指導する先生の賛助出品作品。特殊な技法で絵の具を
固まらせるときに生じる文様を定着させた抽象画、交り合い反発しあう黄色と紫色のぶつかりが面白かった。


会員の方々は60代~80代とお聞きしたが、高齢の方達も大きな作品に挑戦されているのを聞くと、ちょっと元気をもらった

気がした。私が寄らせてもらった日以外にも、モデルとなったSHさんが来場したり、高校時代の女友達が来られてランチを

しながらの女子会を予定しているなど、HIさんも1週間の会期期間中は何かとお忙しそうだったが、浜美展を目指して幾つ

かの作品を仕上げて行くのは目標となるので、なかなかいい機会となっていると思った。次はまたどんな絵が見られるのか

楽しみだ。

2016年5月6日金曜日

花菜ガーデンのクレマチスは見頃だった・その2



『ミス東京』(パテンス系)、やや紫がかったラベンダー色の大輪早咲き種、剣弁の花弁(実際はガク片)は大振りで見応えがある。
花芯の紫色と淡い筋色も、全体にバランスが良く気品を感じさせる。 All Photo by TAKA


花菜ガーデンのクレマチス・ゾーンは、庭園北側のバラ園に続く場所にあるが、フェンス仕立ての遊歩道を回遊できるように

設計されていて、全てのゾーンがバリア・フリーになっている。そのため車椅子の見学者もちらほらと見られた。歴史ある

植物園や庭園は階段や急坂があったり、路面もデコボコしていたりして、障害者や高齢者に必ずしも親切になっていない

ケースが多い。その点では、新しい庭園は設計の段階から時代のニーズに対応していることが特色であり、この庭園も駐車場

から施設・各見学スポットまで、丁寧に作られているのに好感が持てる。




『雪おこし』(原種・風車系・日本)、蕾と開き始めは淡いグリーン色だが、開くに従って白色が増していく八重咲き種。
複層した花弁の重なりがヴォリューム感を出していて見栄えがする。



『クリムソン・キング』(ラヌギノーサ系)、咲き始めの花弁がふわふわと波立っているようなしわのある早咲大輪種。
濃い赤紫色の花弁には、ビロードのような艶がある





『ブルーライト』(ラヌギノーサ系・オランダ原産)、爽やかなスカイブルーの花色と花弁先のクリーム色が美しい早咲き大輪種。
この状態は一重の花弁に見えるが、咲き進むと中心の花が拡がり、二層からボリュームのある八重咲き/万重咲きと変化し、
長期間花姿が楽しめるという。前出(その1)の『ミセス・チョムリー』の変種。




『柿生(かきお)』(パテンス系・日本/小沢一薫作出)、先端が鮮やかな濃ピンク色・中心が白っぽくぼける大輪早咲種。
欧米では『Pink Champagne(ピンクのシャンパン)』と呼ばれているそうな。



クレマチス・ゾーンの案内板から「小沢一薫」氏のことを知り、少し調べてみた。詳しいことは良くわからないのだが、川崎市の

麻生区に在住し(農林省への品種登録がこの住所になっていて、ここの自家農場で育成された、とある)、クレマチスの品種

育成とその栽培技術に長年取り組まれた方のようだ。現在の日本のクレマチス第一人者と言われる金子明人氏(NHK・趣味の

園芸講師や静岡県長泉町の「クレマチスガーデン」の監修者として著名)や、クレマチス・ナーサリー「及川フラグリーン」の

主催者・及川洋磨氏等が師事した、日本のクレマチス研究と育成のパイオニア的存在とされている。長年の間、クレマチスは

接ぎ木によって増殖されていたが、小沢氏が挿し木による効率的な栽培方法を確立した(昭和30年代)ことにより、クレマチス

の品種改良と新種作出が飛躍的に進んだ、とのこと。その研究成果として彼が作出した品種には、自分の住んでいた近辺の

地名をもとに名前を付けたものが多く、『柿生(カキオ)』・『這沢(ハイザワ)』・『篭口(ロウグチ)』・『入生(イリウ)』・

『都築(ツヅキ)』・『踊場(オドリバ)』などの品種が、現在も日本だけでなく欧米でも育成・販売されているというではないか。

その小沢氏(2003年12月没)が作出したクレマチスに命名した地名の由来については、ブログの面白い記事があったので以下

紹介しておきます。興味ある方は覗いてみて下さい。「Souvenirs de la saison」(ブログ名)・『小沢一薫のクレマチス』

(タイトル)です。


 



12年前(2004年6月)に初めて訪れたクレマチスガーデンで見た『這沢』(ハイザワ・テキセンシス系・小沢一薫作出)の
不思議な形は今でも鮮明な印象で私の中に残っている。今回の花菜ガーデン訪問で、長年の疑問(どうしてこんな
風変わりなクレマチスがあるのか?という)が解けて、作出者の姿がおぼろげに分かったのは収穫だった。



つい先月、高尾のサクラ保存林で、江戸時代から16代続く「桜守・佐野藤右衛門」のことを知った。今回はこのガーデンで、

クレマチスの育成に情熱を注いだ「小沢一薫」を知った。そう言えば私の好きな素麺は、300年続く島原(長崎県島原市)の

「鬼塚林之助・寒製」だし、漬け汁にかける七味は長野市善光寺門前の老舗「根元・八幡屋磯五郎」謹製だし。何の脈絡も

無いように思われるかもしれないが、私自身の中には日本の伝統に脈々と受け継がれている「職人魂」(プロフェッショナルと

言ってもいい)、あるいは「ビルトォーゾ」(イタリア語の゛達人゛)に魅惑され限りない興味を抱かされる精神的傾向が

あるのかもしれない。まあ、言ってみればある種の「野次馬精神」であり、「知的興味」かもしれないが、それが意外と行動の

起点となっているように思うのだ。



庭園の一角で見つけたリンゴの花・『シナノゴールド』、白と淡いピンクの花色が、懐かしい信州のリンゴ畑の
春景色を思い出させてくれた。




HIさん宅のお庭で見事に咲いた『天塩』(パテンス系)、薄紫の八重花がたくさん花開いた。


<この項終わり>

2016年5月4日水曜日

花菜ガーデンのクレマチスは見頃だった・その1



『クレマチス・月宮殿』(パテンス系・日本)、咲き始めは薄緑がかった黄色だが、花が開くにつれて中心線も花弁(ガク片)も
白色を強くして行き、咲き終わりは花弁先端が丸くなり白一色となる。丁度蕾が次から次へと開花しており、咲き始めから
咲き終わりまで、色々な花姿を楽しめた。 All Photo by TAKA


平塚市の花菜(カナ)ガーデンで、クレマチスが咲き始めたのをHPで確認し、早速見に出かけた。昨年の秋に秋バラを見に

このガーデンに寄った時、沢山の種類を植えているクレマチスのコーナーを見て(その時は花の時期は終わっていたが)、

初夏のシーズンには見に来ようと楽しみにしていた。私のクレマチス好きは結構長いキャリアがあり、自宅のベランダでも

毎年鉢植えの薄紫花(原種のテッセン系)を咲かせているが、一昨年の初夏には静岡県長泉町の「クレマチス・ガーデン」

まで遠出して、沢山のクレマチスの花を楽しめたのは、とても思い出深い記憶として残っている(2014年6月5~7日・

『クレマチス・ガーデンで沢山のクレマチスを堪能した』他を参照されたい)。クレマチスを専門としたり、多くの種類の

生育状態を管理しているガーデンはとても少ないので、この花菜ガーデンは貴重な存在だと思う。そして、比較的新しい

庭園なので、品種も新しいものが多く、珍しさに魅かれて見て廻るのがとても面白いのだ。



『クレマチス・面白』(パテンス系・日本)、花弁の表側が白・裏側がピンク色の珍しい品種。咲き始めはとんがりの剣先弁だが、
広がると花弁先端は丸みを帯びる。繊細で優し気な花姿から、「次世代の名花になるだろう素晴らしい品種」と、苗販売会社の
サイトには紹介されていた(及川フラグリーン)。表の色が白なので『面白』なのか、表と裏の花色が違う『面白い』花なのか、
どちらも当たってはいると思うが...



『ミセス・チョムリー:Mrs.Cholmondeley』(ラギノーサ系)、ラベンダー・ブルーの花色が美しい早咲大輪。この日も蕾が
沢山開花して、鮮やかな花色がひと際目立っていた。


このガーデンのクレマチスは、ほとんどがフェンス仕立てで、90~180㎝幅のフェンスの下に2~3種の苗が育てられている。

花の開花期が種類によって早咲き・遅咲きがあるので、4月~10月まで花を楽しめると案内されているが、二度咲を含めて、

やはり初夏の5月・6月が花の盛期だろう。この時期は春バラの開花期とも重なるので、両方の花を一度に見ることも出来る

が、クレマチスをじっくり見ようと思ったら早いに越したことはないのだ。結局私は、花友HIさんを誘って4月の終わりに2週

続けてこの庭園を訪れることになったが、晴天に恵まれて初夏の明るい陽ざしの中で、多くの種類を見ることができたのは

とてもラッキーだった。



『ヴェスタプラッテ』(パテンス系)、ワインレッド色が鮮やかな早咲大輪ながら、花芯色もワインレッドなので、
艶と気品が漂う。ビロードがかった花弁の先が丸く、軽やかな印象を合わせ持っている。




『藤かおり』(テキセンシス・ヴィルオナ系/日本・小沢一薫氏作出)、ベル状の花を下向きに開く珍しい品種のクレマチス。
テキセンシス系はチューリップ型の花弁、ヴィルオナ系は壺やベル型の花弁が特徴の個性的な花型、この庭園には
故小沢一薫(かずしげ)氏(川崎市在)作出の新種のクレマチスが数種類栽培されている。彼はクレマチスの品種改良と、
挿し木によるクレマチス量産方法を確立した、と案内板に記されていた。




庭園の一角に、ヒナゲシとネモフィラが咲き揃っていた。オレンジとライト・ブルーのコントラストが軽やかで心地よかった。

<この項つづく>

2016年4月20日水曜日

高尾のサクラ保存林では、珍しいサクラが沢山見られた。




一山中に沢山の種類のサクラが植えられ保存されている多摩森林科学園・サクラ保存林、広大な敷地内を歩いて
見学できる遊歩道が巡らされていた。 All Photo by TAKA



京王線高尾駅から徒歩10分に位置する多摩森林科学園は、「国立研究開発法人・森林総合研究所」という厳めしい冠名が

つく施設だが、簡単に言えば、日本全国の桜を集めた「桜品種保存林」なのだ。その多くは、日本の主要のサクラの栽培品種

や天然記念物のクローン(挿し木や接ぎ木)であり、約500種(1,400本)が植えられている、と見学案内に載せられていた。

日本のサクラの代表品種「ソメイヨシノ」は、江戸末期に一本の原木からクローンが作られ、「染井吉野」と命名されてから

(明治33年/1900年)以降116年間にそのクローンを全国津々浦々にまで植樹して広げたという世界でも類がないサクラの

蔓延だが、そのおかげで個体の性質もそっくりなサクラの開花が、日本列島を北上するという゛サクラ前線゛なる言葉まで誕生

している。



『鬱金(ウコン)』:サトザクラの栽培品種(ヤマサクラ×オオシマサクラ)、明治時代の荒川土手で栽培されていた。
大輪・八重咲きで開花期は薄黄色を帯びた花色、満開から散る間際には赤みが強くなり、他の里桜との区別は
つかなくなる。名前は、淡い黄色の花色から、ショウガ科のウコン(ターメリック)に由来する。




満開時のウコン、淡黄色が飛んでしまう。


日本人の桜好きはソメイヨシノを代表格とするが、サクラには早咲き・四季咲き・枝垂れ・里サクラなど多くの品種がある。私

自身も、早咲の「寒桜」やソメイヨシノに先駆けて咲く「枝垂れサクラ」、そして全国各地に残る樹齢数百年~千数百年の古木

(その多くはエドヒガンかエドヒガン系の枝垂れサクラ)、あるいはソメイヨシノが散った後に花開く山桜・里桜(多くは八重系)を

楽しんできている。最近は、桜名所の混雑ぶりを敬遠して、人混みの中での桜見物は遠慮しているのだが、つい先日は皇居

の桜を見に出かけてしまった(ほとんど野次馬根性です!)。以前から、高尾のサクラ保存林のことは知っていたが、今回ふと

思い立って、健康オタクのYKさんを誘って出かけてみた。





『佐野の桐ケ谷』:京都の佐野造園(創業天保3年、代々御室御所に植木職人として仕え、明治期からは造園業を営む老舗)
が伝えるサトザクラ、一枝のなかに一重と八重が交り咲く、という。名前に諸説ありというが(鎌倉の桐ケ谷が発祥の地、とか、
天皇が御車を返してまで見たことから゛御車返し゛の別名゛あり、とか)、一重と八重の交り咲きは遠方からの眺めで判然としなかった。


佐野造園のHPを覗いてみたら、当主は代々桜守として著名な『佐野藤枝門』を継承し現在16代目(全国の桜守としての活動

は14代目から)、造園業の社名は「植藤造園」とある。自宅の広大な庭園に植樹している約200種のサクラを開花期に一般

開放しており、多くの種類が見学可能な知る人ぞ知るの桜名所なのだ。個人宅の善意で公開されているサクラなので、観光地

の様にはいかないが、機会があったら一度ぜひ訪れてみたいものだ。その佐野藤右衛門作出のサクラがここの保存林に何本

あり、珍しい枝垂れ桜も見ることができた。




満開の『佐野の八重紅枝垂れ』、やや濃い薄紅色の小振りな花がびっしりと付いて見栄えがあった。




可憐ながらも気品を漂わす花びらの連なり、やはり京都地で伝えられてきた高貴なDNAが感じられる。




山の坂道を登ったり、尾根道をぐるっと回ったりしながら、色々なサクラを見て廻ったが、種類の解説や出目なども詳細に案内板

に記されており、読んでみるのもなかなか面白かった。その中に、『牧野日本植物図鑑増補』に画工として植物画を提供して

いる「川崎哲也」氏の創りだしたサクラが数種あり、彼は桜研究家として書籍も何冊か残している(『日本の桜・増補改訂版』等)。

このことは、後から調べて分かったのだが、名前の『飴玉桜(アメダマサクラ)』には、ちょっとびっくりした。とても可愛らしいサクラ

なので、見て思わず微笑んでしまいそうな花姿だが、名前を知って「え~! 何このサクラ~!」と思わず言ってしまった。




川崎哲也氏発見の『飴玉桜』、神奈川県真鶴半島で見つけたとのこと。蕾の形がまん丸に近いののが命名の由来らしい。
マメサクラ×オオシマサクラの交雑種



『薄重大島(ウスガサネオオシマ)』、小振りな花弁だが半八重(5~10枚)の栽培品種、牧野富太郎により真鶴半島で
発見された。鋸歯状の花は、多くのオオシマサクラ品種と同様に、葉と同時に展開する。




多種植えられたサクラ樹の中には、台風の影響で倒れたり、害虫や病気で朽ちてしまった樹も少なからずあった。実生

(種から実を出して成長する、従がって個体のDNAは継承される)と違って、挿し木や接ぎ木による一代限りのサクラは、

本質的に脆弱性を持っているのかもしれない。日本各地のソメイヨシノが枯れる現象に対し「60年寿命説」も言われている

が、100年を超える寿命を生き続けているソメイヨシノの存在も伝えられている。桜守たちは、根の大切さを訴え、古木の

周辺を保護したり、また、古木のとなりに若い苗木を植樹してクローン・サクラの継承を促したりしているが、サクラを愛で

続けるためには、多くの人たちのそういった努力が欠かせないことを理解することが必要だと思う。私の住む建物の周りに

植えられている4本のサクラ(50年以上の古木)も、毎年素晴らしい花を開いて楽しませてくれるので、わざわざ桜(ソメイヨシノ)

見物出かけるのも最近は意欲が少々落ちたが、日本各地にはまだまだ沢山の種類のサクラがあるので、また来年のサクラ

の時期を楽しみにしたいと思う。すでに緑の葉が拡がり、新緑の季節に移りつつあるが、今回サクラ保存林を見られたのは

とてもいい機会だったと感じているのだ。




イロハモミジの新葉が拡がり、明るい陽射しを浴びて初夏の到来を告げていた。



ヤマブキの黄色花も、光り輝いていた。


<付記>この日は快晴に恵まれ、明るい陽射しは初夏を思わせる温かさがあったが、1時間半程の山歩きの後は、翌日身体も
 
軽く感じられ血行が良くなったように感じた。車での往復中、高尾駅周辺で2度(往きと帰りに)信号で長時間止められたこと
 
があった。サイレンを鳴らす警察車両と黒塗り高級車が何台か通過していったが、あれは近くの多摩御陵で、皇室関係の式典
 
があったのだろうと二人でうわさした。そのとばっちりで、高尾山口で美味しいお蕎麦を食べる気力も失せて帰途についたが、
 
町田街道脇にうどん屋を見つけて遅い昼食となった。「開都」という屋号だが、良く知っている「かいと」(足踏みの讃岐
 
うどん店)の姉妹店と分かり、腰のしっかりしたうどんを食べて大満足だった。人生苦あれば楽あり、思わぬ幸運も飛び込んで
 
くるものだ。
 

2016年4月13日水曜日

再開なったどようかいは、おおいに弾けたのだった!



再開なった『どようかい』に集まった面々、皆さんでまた一緒に音楽を楽しめることを喜び合った。
Photo by TAKA and Yatamari


マスターの急逝で約一ケ月お休みしていた椿珈琲店が再びお店を開き、どようかいも再開が成った(4月9日)。茂子ママも、

何時までも店を閉めたままではいられないと、昼間の喫茶を再開し夜は土曜日だけどようかいのために開くことを決めて、

準備の都合から予約制とした。連絡がメンバー達に届いたのでほっと一安心すると共に、当夜は12人の面々が駆けつけて

楽器を弾き・吹き鳴らし、歌い合っておおいに弾けたのだった。



左より、ウッチー(Gt/Pia)・TAKA(Gt/Per)・サイトウさん(Tr/Gt)、Yatamariさん撮影のiPhone斜めショットを
調整したら、ちょっと不思議な画像となった。



左より、キリさん(Pia/Gt)・タッキー(Gt)・ハジメちゃん(Uku)、ピアニカのチューブをマイク代わりにして、十八番の
『雪が降る』を熱唱。「♪ 小雪は来ない~ いくら呼んでも~♪ 」 同じくフォトYatamari


ここでの唄と演奏スタイルは、セッションとかオン・ステージとか格別決めてなく、各自の持ち歌をお店揃えの5冊の歌集の

中から選び、弾き語りや伴奏付きで歌っていく。イントロや間奏・エンディングをソロ楽器(トランペット・ピアニカ・ギターなど)

で入れ、オブリガードやパーカッション(マラカス・シェーカー・クラベス・カホンなど)も加わる。一つの歌曲をみんな参加で

それぞれ楽しみ、次から次へと曲が進むので、6時からスタートした歌会はあっという間に深夜に及び、気がつけば10時

を周っていて遠方から来ているメンバーは、タクシーを呼んでご帰還ということになる。どようかいは1ケ月以上お休みして

いたので、この夜はみんな弾けてしまった。うろ覚えの頭で、当夜唄った歌・演奏した曲を思い出してみるが...

●キリさん:『恋』(松山千春)、『どうぞこのまま』(丸山圭子)、『リバーサイド・ホテル』(井上陽水)

●サイトウさん:『Msty』(JAZZ)、『哀愁の街に霧が降る』(山田真二)、『別れの一本杉』(春日八郎)

●ハジメちゃん:『Stand by Me』(Am-POPS)ーマリさんと一緒、『雪が降る』(アダモ)、『白いブランコ』(ビリー・バンバン)

●茂子さん『Crying Time』(Am-POPS) ●タッキー:『天城越え』(石川さゆり)、『哀しみ本線日本海』(森昌子)

●ウッチー:『パイナップル・プリンセス』(田代みどり)、『夢の中へ』(斉藤由貴)、『あなただけを』(あおい輝彦)

●タカコさん:『朧月夜』(唱歌)、『静かな湖畔』(唱歌)ー4グループで輪唱、『夏は来ぬ』(唱歌)

●TAKA:『黄昏のビギン』(ちあきなおみ) ●ヒサコさん:『昭和枯れすすき』(さくらと一郎)―サイトウさんとデュエット 等々...



ハジメちゃん(Uku)とマリさん(Gt)の伴奏で『Stand by Me』を歌い踊るヒサコさんとキリさん、乗り乗りでした!



茂子さんも『Crying Time』(レイ・チャールズ)を熱唱、右端は飲みすぎでも乗っているダイスケ



サイトウさんとヒサコさんのデュエットは、昭和の名曲(迷曲?)『昭和枯れすすき』、この歌がないとどようかいは終わらない?!



キリさんのPia間奏を入れながら、歌うはタッキーの『天城越え』、ノリノリの演歌です!



タカコさん(元合唱団長)の指導とイズミちゃんの指揮で合唱するのは『静かな湖畔』、4グループに分かれて、追っかけ輪唱。
「俺は、静かな股間だぁ~!」と叫んでいた不届き者もいたが...やれやれ!



私はこの夜専ら伴奏に終始したが、時折シェーカーでリズムを刻んだりもした。フォトYatamari


どようかいは、ウッチーを中心にやってきているが、彼が遠方で家族の介護もあることから、私も補佐している。再開なった

どようかいではあるが、運営の仕方も少し新しさを出して行こうと思っているところだ。49日が明けてまた新しいステージ

に入ったら、例えばお店のレイアウトを変えて小ステージ・スペースを作ったり、ピアノを前に出してきたり、マスターが集めて

まだ使ってないアンプやマイクを活用したり...色々なアイデアは出ているが、まずは店主茂子さんのやりたいようにやったら

よいと私は思っている。定年後の楽しみにマスターと二人で開いた店なのだから、マスターがいなくなっても、集ってくる人々

と楽しい時間が過ごせるようにやっていかれたらよろしいのだと思う。なにせ、集めた楽器はギター(数本)・ELベース・トラン

ペット・サックス・ウクレレ・三味線・DGピアノ・鳴り物各種...とにかく、楽器を持参しなくて済むので、店置きの楽器を

使わせてもらえるのは大変助かる。昨今はギターを背負って移動するだけでも疲れるからね。我等、行き所のない淋しい

おじさん・おばさんたち? と最近加わってくれた若い世代の人たちとともに、一緒に音楽を楽しめるスペースで在り続けて

欲しいと誰もが願っているのに違いないのだ。

2016年4月10日日曜日

シルク・ドゥ・ソレイユ・『TOTEM』 東京公演を観た!



『TOTEM』のテーマ・メインビシユアル、樹木・カメ・カエル人間・蝶・竹など、自然物のイメージを組み合わせたロゴで
表現されている。 All Photo by 「フジテレビ・ダイレクト」HPより。


ダイハツ工業・特別協賛の シルク・ドゥ・ソレイユ『TOTEM』を、お台場のビック・トップで観てきた(4月5日)。日本公演はフジ

テレビジョンが主催、企画はシルク・ドゥ・ソレイユ(フジ~も共同企画)だ。前回の公演(2014年4月25日に観た)『Ovo』以来

2年振りとなる。その時の感激は今でもよく覚えているが、このブログにも以下のように載せている...「各出演者(゛アーチスト゛

と呼んでいた!)の身体能力とパーフォマンスのレベルは高く、衣装の色やデザイン、芸の道具仕立てと舞台構成の素晴らしさ、

そして全編オリジナル曲を生演奏で聞かせてくれる音のハーモニーの心地よさと迫力。『かってないスケールと芸術性を

融合したアクロバットの数々』(パンフより)と謳われるのも納得できると言うものだった。」 演目の違いこそあれ今回も見ご

たえ十分、30分の休憩を挟んで、あっという間の2時間半だった。今回の公演の中から記憶に残るパーフォマンスを幾つか

ご紹介しよう。


『ロシアン・バー』:長さ5m×20㎝位の細長いばね板の上で、飛び跳ね・回転する゛宇宙遊泳人間゛の様なアクロバット。
3人が並行するバーの上で飛び交い位置替えするのにはビックリ。衣装もアポリジニ・アートのような、カラフルで不思議な
幾何学模様だった。迫力とスリル満点!



『ユニサイクル・ウイズ・ボール』:インドネシアの原住民のような衣装の女性たちが、高さ2mの一輪車を漕ぎながら、
金属のボール(お椀)を片足で投げ飛ばし、それを頭の上で受ける集団アクロバット。連続10枚というチョー難しい技だが、
ほとん落とさずに観客から大拍手!!!



オープニングで、ステージ中央にある巨大な亀の甲羅(地球上の生命の起源を象徴しているとのこと)で始まるカエル
達のパーフォマンス。平行棒で、2・3人同時に棒から棒へ飛び移り、宙を舞う姿は圧巻だった。




『フィックスト・トラビス・デュオ』:空中ブランコのアクロバット、恋人同士ような男女二人がつなぎ合い・絡まり合いながら、
極限の空中フォームを披露する。よくそれで落ちないね! と感心しながら観ていた。




『ローラースケート』:結婚式の白い衣装に身を包んだ男女2人によるアクロバット、直径1,8メートルの台の上で回転し
旋回する。特に、二人の身体を首輪でつないで、女性が自転しながら高速で回転するのは、深い信頼関係がなければ
不可能な技だと思った。手に汗握っちゃいました!



『TOTEM(トーテム)』というネーミングは、「太平洋岸の北米原住民族間で自分の部落の表象とする動物またはその他の

自然物;彼等はそれを自分らの先祖として神聖視する」(CROWN・英和辞典より)と辞典にある。私達には「TOTEM POLE」

(トーテムポール);トーテムの像を丸太に刻んで色彩を施したもので、悪魔よけとして家の前に建てる(同辞典)の名で馴染み

がある。モチーフとなって彫り込まれているのは、自然界の動物や鳥、湖や海・川に住む魚や動物、また先住民が伝承して

きた神話や伝承に登場する怪物や超能力的な存在等だ。シルク・ドゥ・ソレイユは現在、世界中の各都市で18の演目を同時

公演していると聞くが、この『TOTEM』も2010年の初演以来、アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアなど7ヶ国33都市での公演を

続けている(400万人以上動員)。演出家のロベール・ルパージュが創りだした幻想的な世界観は、原始の世界あるいは

先住民たちが住んでいた豊かな自然や超自然的な霊物の存在を彷彿とさせるイメージに満ちている。「宇宙から舞い降りて、

地球に生命を与える」役の『クリスタルマン』(キンキラキンに光る衣装で天井からロープで降りて来る!)もそうだし、『フープ・

ダンサー』(インディアンの衣装に身を包んで、6個の輪投げを自在に操る)にしてもそうだ。



『クリスタルマン』は、ほとんど逆さづりになったままで天と地の間をロープで上下する。いやはや、頭にみんな血が
上って(いや、下がって)しまうのではないかと心配した。


それらのアーチストたちが次から次へと繰り広げるアクロバットの凄技は、ステージ中央奥に設けられた楕円形の板状ステ

ージに、プロジェクション・マッピングで映像(画像や動画)が写しだされ舞台のイメージが造られていく。そしてその中央が

可動式ステージとなって、ステージがせり出したりカーブして上方に畳まれたりして、アーチストたちが登場し退出していく。

最新のテクノロジーによる演出は迫力満点だった。舞台を見続ける私は、手に汗握り心臓はバクバク、上を見上げては

口をあんぐり開けたまんま...楽しかったけれど結構疲れた~! だった。ラテン・サウンドの音楽も良かったし、キャラクター

達(サンエンス・アーチスト、クラウン・フィッシャーマン、ヴァレンチーノ等)のコミカルな動きも楽しめた。

前回観た『オーヴォ』は、集団空中ブランコや巨大な壁(10m位)にトランポリンで跳ね上る集団芸など、スケールの大きな

アクロバットが多かったが、今回の『TOTEM』は、1人または2人の超絶的アクロバットが多く、曲芸の原点を見るような楽しさ

があった。世界各地で人気を得ているのも、そんな解りやすいアクロバットであることによるのだろうと感じた。私のシルク・ドゥ

・ソレイユ好きを知っていて、チケットを手配してくれたHIさんも、大いに楽しめた、と言ってくれた。会場の観客も老若男女

・家族連れ・孫連れ・カップルなど非常に広い客層だったことも、この公演の人気ぶりを見させてもらった。



『フィナーレ』で、空中釣りのクリスタルマンを中心に、歌い踊る出演者たち、もちろん音楽は陽気なラテン・サウンドだった。