2008年7月13日日曜日

ジョージア・オキーフとサンタフェ



猛暑日が続いている。梅雨はとっくに明けてしまったようだ。
さらっとした高原の空気、午後のにわか雨、花が咲き乱れる美しい街並み...サンタフェで過ごした一週間の日々が、とても懐かしく思い出される。
一昨年の秋、遅い夏休みをとった私は、前から計画していた気ままな一人旅に出かけた。インターネットで格安航空券を買い、現地ホテルの宿泊予約をして、成田→サンフランシスコ→アルバカーキと乗り継ぎサンタフェに着いた。5泊7日旅だが、゛アメリカの京都゛といわれるこの地にたどり着くには移動日が各1日要る。
ジョージア・オキーフは1986年に98歳で亡くなるまで、ニューメキシコ州・サンタフェの郊外にあるアビキュー村の砂漠にアトリエを構えて、晩年の約40年をこの地で作品制作を続けて過ごした。彼女の絵に登場する、ペターナルの丘、ゴーストランチ、野牛の骨と頭蓋骨、アビドー式の土壁の家...などのモチーフはお馴染みのものだが、私はオキーフが描く花の絵が大好きで、カレンダーは毎年輸入のものを銀座伊東屋で買い求め部屋に飾って楽しんでいる。

「色と対話」本美術展のリーフレット

ジョージア・オキーフの作品はアメリカ国内でも大変人気が高く、エドワード・ホッパー、アンドリュー・ワイエスとともに、アメリカ現代美術の先駆者としてコレクターも国内が主で、作品が海外に出ることは大変少ない。日本でもジョージア・オキーフの作品を集めて展覧会で紹介されたことは、西武美術館(すでに閉館してしまったが)主催で一度あったが、小作品が10数点と記憶している。
アメリカでは、シカゴ美術館のコレクションと、ここサンタフェのジョージア・オキーフ美術館のコレクションが充実していて、1997年に開館したこの美術館は、別棟のリサーチセンターも備えてジョージア・オキーフの作品展示と研究の中心施設となっている。膨大な作品の中から70点を選んで「色と対話」と題された企画展を見に来たのだった。前置きが長くなったが、オキーフファンの私としては、ここに来るのは長年の夢だったことがお分かりいただけたかな?












美術館の入り口・建物の外装はアビドー式の土壁で出来ている

代表作のひとつ「BELLA DONNA




丸2日間をこの美術館で過ごした。約70点の作品を飽かずに眺め続けた。 お腹が空けば、隣のカフェでランチを取ったりコーヒーを飲んだり。そう言えば、サンフランシスコから先は、一人の日本人にも会わなかった。美術館員も日本人の私が珍しかったのだろう、ひと言二言会話を交わしてはすっと離れていく。
オキーフ作品の素晴らしさは、現実の花を抽象に高めて表現したことだ。
畳一枚の大きさに描かれた大きな花、ペチュニアやドクダミ、ダツラやカラーなど...花をしっかりと見つめた人でなければ描けない、造形の美しさ・
色のグラデーションとコントラストの鮮やかさに満ちていて、修練されたデッサンと構成力で表現され、圧倒的な生命力で見る人に迫ってくる。
ニューヨークのギャラリーで初めてこの絵が展示されたとき、ある人は、「わいせつな絵だ!」と非難し物議をかもしたと言う。今まで見たことのない花の姿を前にして多くの観客は衝撃を受けた。これに対してオキーフはひと言も反論しなかった。確かに、生命の神秘を表現している花の絵が、女性の秘部を想像させる場合があるかもしれない。花芯は、神が作り上げたとしか言いようのない神秘的な構造で出来ているから。それを゛猥褻゛に結びつけるのは、発想する本人の精神性によるものであろう。
今となっては懐かしい話だ。
バイクに後ろ乗りするオキーフ
この美術館で過ごした2日は、本当に至福のひとときだった。
思い起こすたびに、今でも幸せな気持ちになれる。

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