2008年7月19日土曜日

ジョージア・オキーフとサンタフェ(続き)


サンタフェは、1610年にスペイン系移民により創設された全米50州の中で最も古い街だ(ニュー・メキシコ州は1912年に47番目の州として合衆国に加わった)。スペイン植民地時代にプラザを中心とする街づくりがなされ、教会や総督邸、博物館や商店が建てられた後、中心から放射状に伸びる道路により、周辺の都市と農村部に発展したという。その後、街づくりに歴史的スタイルが導入され、プエブロ族の建築様式:日干し煉瓦色の概観(アビドー式)に統一され美しい街並みが生まれた。世界各地からの観光客が大変多いので、ホテルやブティック、レストランやカフェも軒を連ねて賑わっている。

キャニオン・ロードの彫刻ギャラリー:patricia carlisle fine art
アビドー式のと建物と花と樹木一杯の入り口・中庭が美しい All Photo by TAKA

標高2000m を超える高原に位置するサンタフェは、周囲の砂漠の山々や台地にかこまれながら、緑と花々に溢れる奇跡的に美しい街で、市内には東西に流れる小川に沿って樹木に囲まれた遊歩道があり、秋の気候では朝夕12℃、昼間27℃と寒暖の差が大きく、空気はからっと乾いていて気持ちがいい。

午後には、スコールがさっと来て、一雨降らせた後、また暑い日ざしが戻る。さらりとした空気と爽やかな風は、私が少年時代をすごした信州の気候とよく似ていて、何故か懐かしい思いが溢れた。Dejavuのようなちょっと不思議な気分...

この街で楽しかったのは、ニューヨーク、ロスアンゼルスに次いで多いという美術館・博物館・美術ギャラリーを次々と訪れたことだった。プラザ周辺だけでなく、キャニオン・ロードのギャラリー街、ミュージアム・ヒルの美術館群など、質・量ともに世界的にトップクラスというのも頷ける。難解なものはなく、おおむね気軽に楽しめるアートが多い。絵画・彫刻・ジュエリー(ターコイスが充実している)・インスタレーション...様々なジャンルに渡って、現代アートから始まり、ネイティブ・インディアンアート、ワイルド・アート(原野や馬などのモチーフ作品)、フォークロア・アート、などなど。特にキャニオン・ロードのギャラリーは、入り口や内部にプランターや鉢に植えられた花(ペチュニア・コスモス・セージなど)が溢れていて、とてもきれいだった。アートと一緒に花を楽しめたのは初体験だった。





左:サンフランシスコ⇔デンバー⇔エルパソへと連絡する、サンタフェ・サザン鉄道のひなびた SANTA FE

中:オキーフが好んで描いたダツラ(朝鮮あさがお/英名JIMSON WEED)の花、ホテル側の公園で見つけた
右:毎晩通った゛WILEE'S BLUES BAR゛、出演者がブイブイと鳴らすブルースギターにしびれっぱなし
美術館やギャラリーを巡って、心地良く疲れてホテルに戻ると、熱いシャワーを浴びてひと眠り。ホテルは朝食付きなので、朝はレストランで果物・サラダ・ヨーグルトやパンにハム・エッグ、果物ジュース・コーヒーなど軽くとってから出かける。近所に大きな食品スーパーがあり、ビール・ワイン・ジュースなどの飲み物から、果物・サンドイッチ・惣菜・肉・魚まで何でも売っているので、それを買い込んで昼食はランチと飲み物持参で歩き回る。午睡からさめると身体が軽くなっている。さて、今日は何を食べようかな?と、ガイドを参考にして決めてから夜の街に繰り出す。  
キシコ料理は、チリソースが効いていて旨かった。サンタフェ駅側のTOMASHITA'Sというお店で食べた時、ウェイターが必ず唐辛子の種類を゛赤か緑か?゛と聞くのだが、私の食べた緑チリは相当辛かった。焼いた肉も煮込んだ豆もチリがたっぷり入ってている。地元ビールも度数が高い(8から11%でワイン並み!)。すぐ酔いが廻ってくるのだった。RAILYARDはウェスタン料理のお店、カルフォルニアの白ワインで白身魚(鱸かな?)のソテーと空豆の茹でたのを食べたが、さすがに量が多い。空豆は゛どんぶり一杯゛と言う感じ、塩味が程よくておいしかった。一度だけKONAMIと言う日本食屋に出かけてみた。当地でも日本食の人気は高く、高級なお店も多いと聞いた。天麩羅・刺身・焼き鳥・野菜の入ったコースで食べてみたが、なかなか美味しかった。合わせて日本酒を少々。BGMで流れているJ-POPSの曲がわからず店員に訊ねて見ると、奥から板前が出てきて「小椋桂で~す!」と教えてくれた。この会話だけがこの旅で交わした唯一の日本語だった。

ゆっくり夕食をとってから、ひと歩きしてホテル近くのBLUES BARのカウンターに座る。この街は程よい広さなので、歩くか市周回バスで目的地への移動が出来る。バーボンウィスキーを飲みながら今夜の出し物を待っていると、デニムにT-シャツ姿の黒人のおっさんとドイツ系らしいがっしりとしたおっさん(私もおっさんだが...)がギターケースを肩にふらりと入ってきた。ひと言二言店のスタッフと言葉を交わしてからやおらギターを取り出し、チューニング。そして、ブルースコードでガンガン弾き始めた。しばらくしてもう一人の黒人のひげ親父が登場、3人でブルースをブイブイとかき鳴らし続ける。曲名は分からなかったが、2時間ほどのライブで私はすっかりしびれてしまった。
毎晩この店のカウンターに座って、ギターソロやバンドやミュージシャンのセッションを聴いて楽しんだ。それもやはり、至福の時間だった。お店のお客も老若男女それぞれが夜の時間を楽しんでいる風で、生活を楽しむことに意欲的なサンタフェの人たちに好感が持てた。最後の夜に、この店のネームが入ったキャップ型の帽子を記念に買ってお土産にした。


左:ちょうどフェスタの最中で、市の中学生バンドによるアメリアッチの演奏
右:市内を流れる小川に沿って遊歩道がある。木々と緑に溢れた心地よい空間
アートとミュージック、そして咲き乱れる花々を堪能したホリデーだった。高原の土壁に彩られた美しい街サンタ・フェ、また何時の日にか訪れてみたい。

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