2008年10月12日日曜日

居眠り磐音江戸双紙

私の時代小説好きは、司馬遼太郎に始まり、池波正太郎、藤沢周平と続いて、現在は佐伯泰英に至っている。その読み方は、作品をほとんど網羅して読みつくし、二度三度と読み返すというもので、関連するエッセイや料理本にも手を出し、また、記念館や作家展にも訪れてみる、という結構念のいったものだ。

CS放送の時代劇チャンネルで過去放映したTV時代劇の再放送をやっているので、ここ10年ほど楽しんできたが、この作家たちのものはほとんど見尽くしてしまった。したがってCSチャンネルも最近とうとう解約に至った。

双葉文庫から書き下ろしで出版されている「居眠り磐音江戸双紙」は、最新刊の「石榴の蝿」で28巻となり(同読本を入れて)、通算で700万部出版というから大ベストセラーであろう。単行本で出版してその後文庫本を出すのではなく、いきなり文語本で出版というスタイルを作ったのも佐伯泰英が最初で、彼が書き下ろしているほかのシリーズ、「酔いどれ小藤次留書」(幻冬舎文庫)、「古着屋総兵衛影始末」(徳間文庫)、「吉原裏同心」(光文社)、「鎌倉河岸捕物控」(ハルキ文庫)なども、それぞれファンがいて人気が高い。各シリーズ連載中の続編がこれからも出てくるのがとても楽しみだ。




何が魅力かといえば、まず主人公の剣捌きというか、戦い方がとても面白い。佐伯は剣道の極意や流派ごとの剣使いをよく知っていて、「ふ~む!」と驚かされることが度々ある。恐らく、古書の免許皆伝書や古武道諸流派の指南書などの研究に怠りないのであろう。坂崎磐音の場合も、後に佐々木玲円の道場を継いで佐々木磐音と名乗るのだが、゛居眠り磐音゛と称される様に、春風駘蕩とした受けの剣が一転して攻めに入る瞬間がハイライトでわくわくする。

故郷の豊後関前藩(大分県南部)の国家老を勤める父と家族、磐音が暮らした金兵衛長屋の住民たち、磐音が後見を勤める両替商の今津屋吉衛門と老分の由蔵、毎朝のうなぎ捌きで生計を立てている鰻処宮戸川の鉄五郎親方と幸吉、佐々木道場の主玲円と幕府の要人速水右近と門弟たち、南町奉行所の名物奉行笹塚孫一と定廻り同心たち、幼馴染で将来を誓い合ったが運命の流転により花の吉原で太夫となっている奈緒、そして今小町と呼ばれ磐音に思いを寄せる今津屋のおこん...多彩で魅力溢れる登場人物たちが繰りなすドラマは、彩り鮮やかで第一級のエンターテイメント小説なのだ。

毎週土曜日の夜に、NHK総合TVで「陽炎の辻・居眠り磐音江戸双紙」が現在放映中で毎週楽しんで見ている。第一回のシリーズ放映12回(各45分)が終わり、現在は第二シリーズ(各30分)なのだが好評のようだ。最初にこのドラマを見たときに、配役が、磐音役:山本耕史、おこん役:中越典子だったので、゛ずいぶん若いなぁ!゛ と思ったものだが、小説の中では二人とも二十歳そこそこであり、青春群像を描いているのだからこれでいいのかも、と納得した。舞台である江戸の街並みがうまく再現されていてなかなか雰囲気がある。

時代劇ドラマも、「鬼平犯科帳」や「剣客商売」、
「暴れん坊将軍」などの時代と違って、役者の世代交代があり新しいドラマもこれから出てくるだろうから、いいドラマをTV局に送り出してもらいたいものだ。最近12CHで、佐伯泰英の「密命」シリーズを榎木孝明主演で放映していたのを見たが、面白かった。゛寒月霞切り゛という秘剣が冴えていた。このシリーズは、まだ私は読んでいないので、いずれ読んでみようと思っている。


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