2013年11月12日火曜日

フィギュア・スケート ISU・GPS NHK杯 女子シングルより


今年のNHK杯の表彰台に上がったのは、浅田真央(金)/エレーナ・ラジオノア(銀)/鈴木明子(銅)の3人、なかなか見ごたえのある競技が続いた。 ALL Photo by Zimbio

国際スケート連盟(ISU)が主催する「グランプリシリーズ(GPS)」は、世界の有力フィギュア・スケート選手が出場する競技会で、2013-2014年度のシーズンは、以下の六都市を転戦して開催される。スケート・アメリカ(デトロイト・10/18~)、スケート・カナダ(セントジョン・10/25~)、中国杯(北京・11/1~)、NHK杯(東京・11/8~)、エリック・ボンパール杯(パリ・11/15~)、ロステレコム杯(モスクワ・11/22~)、グランプリ・ファイナル(福岡・12/5~)。グランプリ・ファイナルに出場できるのは、5会場での上位成績者。年明けに、ヨーロッパ選手権(ブタペスト・1/13~)、四大陸選手権(台北・1/20~)、そして、3月24日から埼玉市で開催される世界フィギュア・スケート選手権は、GPSシリーズの上位成績者が出場できる大会で、ここでの優勝者は、オリンピック優勝者と同等あるいはそれ以上の栄誉を与えられる。その間に、ソチ冬季オリンピックがロシアで開催される(2/6~2/23)。
ここ7年間の世界選手権優勝者や表彰台に上がった選手を見ても、女子シングルでは、カロリーナ・コストナー(伊)は第一線を退き、キムヨナ(韓)もシリーズに出ていない。アリョーナ・レオノア(露)も往年の勢いを欠く。近年台頭著印しい日本勢では、浅田真央が復活、ベテランの鈴木明子も元気、安藤美姫はGPSシリーズに出場枠はないが、成長が目覚しい若手(村上佳奈子や宮原知子など)も加わって選手層が厚いので、善戦が期待できる。最近のフィギュア・スケート(FS)の人気は高く、ファンも増えているように感じる。
今年のGPS・カナダ杯優勝者のユリア・リピニツカヤと中国杯優勝者のアンナ・ポゴリラヤのロシア勢が、NHK杯には出場しないで他の大会に回ったが、若手を中心に元気を増しているし、アシュリー・ワグナー(アメリカ杯2位)や今回出場のグレーシー・ゴールド(カナダ杯3位)のアメリカ勢 からも目は離せない。
かつて、荒川静香がトリノ・冬季オリンピック(2006年2月)で金メダルを獲得した時、当時の日本のマスコミは、どの各社も優勝を予測していなかった。ただ、アメリカのマスコミは、彼女の優勝を的確に予測していた。それは、金メダリストはフロックでは決して無く、その近年の真の実力者が得ることを、GPSシリーズと世界選手権の結果から予見していたのだ。彼女は、サーシャ・コーエンとミシェル・クワン(ともに米)を押さえて、2004年の世界選手権(ドルトムントで開催)の優勝者であり、そのシーズンのGPSシリーズでも好成績を残していた。当時の日本マスコミには、この認識が薄く、タレントのような人気や過度の期待感からオリンピックの金メダリストを願望していたに過ぎなかったと思う。そのシーズンの一連の成績と世界選手権での結果が、FS選手の大舞台での競技成績に直結することを、よく理解する必要があるのだ。




























ジャンプが安定してきた浅田真央(日)、女子FS選手の中でも屈指の実力者となった(左)。
エレーナ・ラジオノワ(ロ)の゛ビールマン・スピン゛は、出場選手の中でもNO,1の美しさ、ジュニアからシニアに入ったばかりの若干14歳、オリンピックは年齢制限で出場不可(右)。

さて、前置きが長くなったが、浅田真央(金メダル)の最近の演技は安心して見ていられるようになった。前回オリンピックでキムヨナに敗れた後、佐藤信夫コーチのもとでスピンやステップを見直し、ジャンプだけに頼らない総合的な演技改善に打ち込んできた結果が、ようやく実ってきた。今シーズン始めからアメリカ杯を優勝し、仕上がりの良さをアピールしている。
今回演技でも、まだトリプル・アクセル(3,5回転)の着地に課題があるものの、フリー・ショート共にしっかり回っている。フリーの課題曲:「ノクターン」(ピアノソロ)に乗った滑降では、すべてのジャンプ(コンビネーションも)をノーミスで決め、スピンもステップも抜群によかった。特に、演技と演技をつなぐ゛間゛がとてもスムーズ、曲調に合わせた身体の動きは、足や手先まで良く伸びて細かな表現まで出来ていた。ステップのかなり複雑な動きも、それを感じさせない滑らかさがあった。演技中の表情にもゆとりが感じられた。過去3回(金2・銀1)、世界選手権の表彰台に上っている彼女にとって、今シーズンのソチオリンピックと2014世界選手権は、競技生活の集大成になるだろう。今シーズンでの引退が伝えられているが、私はまだまだ行けるのではないかと思っている。

最近低迷していたロシア勢ではあるが、今シーズンはジュニアから上がってきた若手選手の活躍が目立っている。エレーナ・ラジオノワ(銀メダル)の演技には、正直私もびっくりした。゛彗星のように登場してきた゛というか、ロシア勢恐るべし!の印象を強くした。フリーの演技は、映画「フリーダ」のテーマ曲だったが、ビアソラ風のタンゴのリズムに乗ってジャンプを次々に決め、レイバックスピン・ビールマンスピンの美しさも抜群、ステップも滑らかで途切れがなく、155cmの細身な身体が大きく見えた。2013年のジュニア選手権(ミラノ)の表彰台に上った3人は、共にロシア選手(E・ラジオノワ:金 / J・リプニツカヤ:銀 / A・ポゴリラヤ:銅)、今後彼女等の動向から目を離せなくなった。





























今年28歳のベテラン選手・鈴木明子(日・銅メダル)は、今シーズンがラスト・シーズンと伝えられているが、演技はショートの方が良かった。テーマ曲「愛の賛歌」(ヴァイオリンのストリングス)に乗って、ジャンプはノーミス、スピン・ステップともに、メリハリがあってスムーズな滑りだった。フリーでは、ジャンプが上手く行かず後半に乱れたが、それでも全体をまとめる力はやはり長年のキャリアを感じさせてくれる素晴らしいものだった(上左)。
ミシェル・クワン、サーシャ・コーエンが第一線を退いた後、アメリカ勢が表彰台に上ることがなかなか難しくなっている。アリッサ・シズニーも今シーズンから姿を消している中で、彼女の後継者を髣髴とさせてくれるグレイシー・ゴールドはまだ18歳、長身で細身の身体から醸し出す雰囲気は、゛Gracy゛の名前によく合っている。フリーの演技は、チャイコフスキーの「眠れる森の美女」(オーケストラ)に乗って滑ったが、スピン(レイバックとビールマン)は、線がぶれず回転スピードも速くてとても良かった(A・シズニーもこれを得意としていた)。ジャンプにミスが続き、惜しくも表彰台を逃したが、アシュリー・ワグナーと共に今後も表彰台に上る有力選手であることは間違いないと思う。

その他、長身の身体で高いジャンプを次々と決めたベテラン(27歳)のヴァレンチノ・マルケイ(伊)、ジュニアから上がってきて、ジャンプ・ステップ・スピン共にバランスのいい演技を見せた宮原知子(日)、往年の勢いがなく演技にも精彩を欠いたアリョーナ・レオノア(ロ)など、なかなか見ごたえのある演技を楽しめたNHK杯・女子シングルだった。


今後の活躍が楽しみな宮原知子、15歳の高校生

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