▢男子シングルの表彰台は、町田樹(日・銀)、マキシム・コフトゥン(金RUS)、デニス・テン(銅KAZ)
の3人、高度な4回転ジャンプの戦いだった。 All Photo by ZIMBIO
中国杯での本番前練習中・アクシデントで、羽生結弦(日)とHan YAN(中国名:閻涵エンカン)が背面衝突し、
羽生はそのフリー演技を包帯姿で滑走した姿はまだ記憶に新しいが、このフランス杯にHan YANは出場し
てきた。しかしその演技は精彩を欠いていたし、成績も8位に終わった。羽生は今週のNHK杯に出場を予定
しているが、果たして後遺症もなくちゃんと滑れるのだろうか? というのも、GPS5戦を終えてすでに、ハビエル
・フェルナンデス(ESP)はモスクワ杯を制し(金)、カナダ杯でも2位の成績でファイナル戦への出場を決め、
マキシム・コプトゥン(RUS)は、中国杯・フランス杯ともに優勝、町田樹もアメリカ杯優勝・フランス杯2位に着け、
3選手ともファイナル戦に勝ち進んでいるのだ。NHK杯には、カナダ杯を制した(金)無良崇人(日)も出てくる。
ファイナル戦の残り3枠に入る選手として、羽生結弦・無良崇人・セルゲイボロノフ(RUS・モスクワ杯2位)達
の戦いが見ものだ。すでに2戦を終えているデニス・テン(KAZ・フランス杯3位)の枠入りは微妙だが...
オリンピック出場枠(ソチ)をプルシェンコと争ったマキシム・コフトゥンが
表彰台を狙う選手として急速に台頭してきた。176㎝(19歳)という長身から
繰り出すジャンプは迫力満点だ。このフランス杯でも、ただ一人、4回転
ジャンプを2度成功させ、一気に波に乗った。スピンのコンビネーションも、また
ステップのシークエンスもきれいにまとめて、『エグゾジェニシス交響曲』の
ドラマチックなメロディに乗った滑りは、すべてのジャンプをノーミスでこなし、
文句なしの優勝だった。中国杯でも優勝している彼が、ファイナルで真ん中
の表彰台に上がるのも現実味を帯びてきた。
すでにアメリカ杯に優勝している町田樹にとって、このフランス杯を制した
い思いは強かったと思うが、なかなか思い通りにはいかないものだ。
ベートーベンの『交響曲第9番』(お馴染みの歓喜がテーマ)に乗っての滑走
は、細部まで神経を行き渡らせたむずかしいものだったが、やや力が入ったか?
バランスに欠けるところがあり、冒頭の4回転ジャンプ(ルッツ)で転倒し、波に
乗れなかった。気を取り直して、スピンやステップをまとめ、残りのジャンプを
うまくこなしたが、2位に終わった。しかし、゛氷上の哲学者゛と呼ばれるように、
彼のスケーティング・コンセプトは大変明確だ。昨年シーズンの『火の鳥』の
ように、曲と演技がハーモニーしてくれば、今後もより上の演技点を狙えるだろう。
高橋大輔が引退し、小塚崇彦が低迷している日本選手の中では、羽生結弦と
ともに表彰台に上がれる選手として応援したいところだ。
実力は超一級だ。2013年世界選手権銀メダル、2014年ソチオリンピック銅
メダリスト、あのパトリック・チャンを一回り小さくしたような体躯から繰り出す
演技は、スピードとキレがあり、演技をつなぐ間の取り方も絶妙で、身体の
小さな選手のお手本と言えよう。今回のフリー演技では、『New Impossibilities』
(十面埋伏)という珍しい曲(演奏はYo Yo Ma)で滑ったが、4回転ジャンプを
2度とも成功できず、点数を伸ばせなかった。しかし、ショートの演技はトップの
91.78の高得点をたたき出して、その実力振りを見せてくれた。
GPSファイナル戦(スペイン・バルセロナ)での優勝争いは、ハビエル・フェルナンデス、マキシム・コフトゥン、
町田樹の3選手に絞られるのが濃厚だが、ソチオリンピック金メダリストの羽生結弦がどこまで巻き返すか、
また、無良崇人とセルゲイ・ボロノフがどこまで食い込んでくるのか? 興味はまだまだつきないのだ。
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