第4回 Françoise Hardy「Comment Te Dire Adieu」その4.アップテンポのフレンチ・ポップス誕生
1968年発売のアルディのアルバム「Comment Te Dire Adieu」
音源は2016年発売のRemastarisè版「Comment Te Dire Adieu」(邦題:さよならをおしえて)の動画。上のタイトルを指定右クリックすると動画が見られます。
さて、アルディの「Comment Te Dire Adieu」の原曲と、ブラジル本国とアメリカにおけるボサノヴァの大流行、そしてフランスにおけるボサノヴァの浸透の経緯をたどってきた。では、この曲は”フレンチ・ボッサ”なのだろうか?
なかなか分類が難しいところだが、ブラジル音楽のボサノヴァとフランス音楽のスタイルが融合してできた"フレンチ・ボッサ”の特徴を見ると、「①クラシックギターと和声のコンビネーション ②サンバのリズム(ギターと打楽器) ③アンティシペーション(表拍に裏拍が食い込ズレ)のリズム、④ヴォーカル中心のスタイルで伴奏は控えめ、などがあげられる。
アルディの声は透明で一語一語の発声はしっかりしているが静かに歌うタイプ、パワフルな声量と歌唱力で高らかに歌い上げるタイプではない。しかし、上記の②・③・④のエッセンスは取り入れられたが、肝心の①のクラシックギターは入っていない。多分、ボサノヴァギターの名手が見つからなかったか、あるいはなしで編成をしたのか?
恐らく、作詞を手掛けたゲインスブールと、アルディの要請を受けて編曲と伴奏を担当したサバール(Jean Pierre Sabar)は、話すようにそしてきれいに歌うアルディの歌い方を生かすように、歯切れの良いビートの効いたイントロと、ブラス(金管楽器)とオーケストラ(ストリングス)のハーモニーを抑えめにバックに入れたに違いない。
ここには、ワンダレイのボサノヴァの”アップテンポのリズム”が生かされ、A.ゴーランド版インストルメンタルの”切れの良いサウンド”が生かされることになった。曲の途中でシャンソン的な「語りーParler」が入り、あくまでフランスのPOPS(歌謡曲)に軸足を置いてボサノヴァの新しいエッセンス(真髄)を取り入れて「アップ・テンポのフレンチポップス」を誕生させたのだ。
アルディは9枚目となる自身のこのアルバムに、オリジナル曲を7曲・外国曲カバーを5曲収録しているが、その中の1曲に「La Mésange」(シジュウカラ)がある。ボサノヴァのマエストロ:トム・ジョビン作曲・シコ・ブアルキ(Chico Buarque)作詞の「Sabià」(ツグミーブラジルの国鳥)が原曲だ。1968年(アルディのアルバム発表と同じ年)のブラジル国際歌の祭典で1位に輝いた曲で、「ブラジルの森に戻って、ツグミの歌う声を聴きたい!」という自然回帰の歌だ。
1968年アルバム発表当時のアルディ(身長174cm! 高いですねェ~) Getty Image
https://youtu.be/Cvj4oRPkyRQ
「La Mésange」は、アルディが純粋なボサノヴァ曲を仏語詞(作詞はフランク・ジェラール)で歌った唯一の例であり、自然との調和というテーマやボサノヴァの囁くような歌い方・ギターを中心のアコースティックなサウンドに、アルディが強く惹かれていたことを示す良い例だと思う。ただ、原曲のサンバのリズムは普通のアルペジオに変更されて、ソフトな曲調になっている。
けれども、フレンチ・ボッサはフレンチ・ポップスのアレンジだから、本物のボサノヴァのリズム・ギター伴奏のテンションコード・シンコペーションする歌い方やギター演奏を持つものとは異なるのは致し方ない。その当時の世界の音楽状況やフランス国内のボサノヴァの浸透やそれへの憧れを意識しながらも、最終的に”アップテンポのフレンチポップス”に「Comment te dire adieux」が仕上がったのも時代の趨勢だったのかも知れない。しかし、フランス内外で大きなヒット曲となり、今もアルディの歌を代表する曲として、多くの人に知られているのは確かなことだ。
この考察のスタートとして、「Comment Te Dire Adieu」が、フレンチ・ボッサの範疇に入るのではないか? という予測(あるいは思い込み)はあったのだが、よく調べて関連する多くの曲を聴いてみると、ボサノヴァ的ムーブメントにアルディは惹かれながらも、やはりフレンチポップスに軸を置いた歌曲にしたことが良く判った。
〈 この項続く 〉




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