第4回 Françoise Hardy「Comment Te Dire Adieu」その5. 画期的なセルジュ・ゲインスブールの歌詞
ピアノを弾くゲインスブール 1967年 Getty Images
「Comment Te Dire Adieu」の作詞者は、言わずと知れたセルジュ・ゲインスブールだ。作詞・作曲・編曲・俳優など多方面で活躍する、今風に言えば”マルチタレント”だろう。彼の奇才・天才振りは、数々の毀誉褒貶(きよほうへん)とともに知られてはいるが、時にはスキャンダラスな話題(私生活のラブ・アフェア)をメディアに提供し、時にはローマ法王から不謹慎のとがめを受け(Je T’aime Moi Non Plusの超セクシーな歌)、時には右翼の軍人たちから襲われそうになったり(フランス国家をレゲエ風に歌っちまった)、でもその都度切り抜けて商業的には大ヒットとなってしまう、というとても一筋縄ではいかない”けったいな御仁"ではあるのだが. . .
彼作詞の仏語詞と日本語訳(私Jovial TAKAによる)を載せてみる。邦題は「さよならを教えて」だが、「なんて さよなら言ったらいいの?」の方が原歌詞に近い。
Sous aucun prétexte, Je ne veux どんな言い訳も、私はいや
Avoir de réflexes, Malheureux 苦しい反応しちゃうのも、いや
Il faut que tu m'ex-pliques un peu mieux もっと上手く 説明して
Comment te dire adieu なんて さよなら言ったらいいの?
Mon cœur de silex Vite prend feu 私の心は火打石 すぐ火がつくの
Ton cœur de pyrex Résiste au feu あなたの心は 耐熱ガラス
Je suis bien perplexe, Je ne veux 私はとても困ってる いやよ
Me résoudre aux adieux さよならを決めるなんて
Je sais bien qu'un ex- 良く知ってるわよ 終わったの
Amour n'a pas de chance, 恋にはツキがなかったし
ou si peu あってもちょっと
Mais pour moi un ex-plication vaudrait mieux でも 説明があるほうがいいわ
Sous aucun prétexte Je ne veux どんな言い訳も、私はいや
Devant toi surex-poser mes yeux あなたの前で 目の涙を晒したくない
Derrière un kleenex Je saurais mieux ティシュの後ろに 隠れていたいわ
Comment te dire adieu なんて さよなら言ったらいいの?Comment te dire adieu なんて さよなら告げたらいいの?
Tu as mis a l'index あなたは 除外したのね
Nos nuits blanches, nos matins gris-bleu 眠られぬ夜と くすんだ朝を
Mais pour moi un ex-plication voudrait mieux でも 説明があるほうがいいわ
Sous aucun prétexte, Je ne veux どんな言い訳も、私はいや
Devant toi surex-poser mes yeux あなたの前で 目の涙を晒したくない
Derrière un kleenex Je saurais mieux ティシュの後ろに 隠れていたいわ
Comment te dire adieu なんて さよなら言ったらいいの?
Comment te dire adieu なんて さよなら言ったらいいの?Comment te dire adieu なんて さよなら言ったらいいの?
やはり、彼の語彙力・表現力はすごいと思う。下線部の prétexte surex- kleenex などはすべて韻を踏んでいるし、アルディもゲインスブールの意を汲んでアクセント(強調)をつけて唄っている。また、語尾の veux yeux mieux なども韻を踏んでいるので、全体としてメロディーラインの流れがスムースであると同時に、とてもメリハリが効いているのだ。
イントロのベース・メロディとドラムの歯切れの良さ、歌詞の素晴らしさとメロディに乗った譜割の小気味よさ、オーケストラと金管の控えめなハーモニーに乗って、話すように・語るように歌うアルディの歌唱. . .すべてが原曲や編曲されたバージョンを超えたレベルで解りやすく粋に表現されたことが、この曲のヒットに繋がったと思う。
最後に、原曲 M.ホワイトニング版と仏語翻案アルディ版の比較を試みたい。イントロとバース(Couplet)の部分(1番のみ)だが、リフレイン(サビ)は除いてある。ホワイトニング版は、譜面販売サイトでは見つからず(A.ゴーランドのインスト・バージョンはあるが)、自ら起譜したものだ。アルディ版は、ヤマハ・ぷりんと楽譜で入手したもの。
ホワイトニング版を見ると、ゆったりした4ビートで歌い上げるラブバラードながら、スウィング・ジャズ的な”ハネル”曲調なのが良く判る。片やアルディ版は、A.ゴーランドのインスト版をうまく取り入れて、イントロ(B)にシンコペーションするボサノヴァのリズムを導入し、バース(Couplet)部分にもボサノヴァのシンコペーションするメロディに変えることで、ガラッと雰囲気を変えてしまった。また、メロディーラインも小節頭(1拍目)に言葉の”アクセント”を置くように歌詞(譜割)を作っているのだ! ウ~~~ムゥ!!
「フレンチボッサ」という森に迷い込んでから、あちらこちらに寄り道しながら色々な発見があった。花々も咲いていたし、きれいな泉も湧いていたし、小鳥の声も聴くことが出来た。まったく迷い道クネクネであったが、ようやく森からの出口にたどり着いたようだ。その散策というか尋ね道というものは、自分の好きな歌や親しんできた音楽の小径だったので、今はとても満たされた気持ちでいる。
次の機会には、「It Hurts To Say Good-bye」や「Comment Te Dire Adieu」、「Sabia」やボサノヴァ曲を弾き語りしたくなっている。
〈 この項終わり 〉




コメント
コメントを投稿