2008年4月20日日曜日

ミュゼ浜口陽三


その小さな個人美術館は、安産祈願で有名な水天宮の近く、高速道路脇のビルの中にある(1階と地下1階)。「ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション」、名のとおり生家・ヤマサ醤油が開いた私設美術館で開館は1998年


私はこのカラー・メゾチントの版画作家にとても惹かれていて、1990年に東京都庭園美術館で開かれた「浜口陽三展」も見ているし、何よりも漆黒の闇から浮かび上がるスイカやさくらんぼ、レモンやテントウムシのモチーフが大好きだった。


今回は、陽三夫人で版画作家でもある南桂子との二人展で、それぞれ30作品づつを出品して゛ひびきあう詩゛というタイトルがついた企画展である。こういう個人美術館のよさは、国立なんとか美術館のように人を見ているのか作品を見ているのかわからん!ということは一切なく、思うがままゆっくりと作品と向き合って楽しめることにある。メゾチント作品は概してサイズが小さい。銅版を作るのに大変手間がかかるし、細かいグラデーションを彫るのにも繊細な神経を使う。近寄ってしげしげと見て初めてマチエールの細部がわかるのだ。
そして、収蔵された多くの作品は散逸することなく、周期的に色々な作品を見ることが出来る。         
                        ■22のさくらんぼ 浜口陽三展カタログより

私の好きな「22のさくらんぼ」もあった。闇に浮遊するがごとき赤い実と緑のヘタが心地よいリズム感で縦に並び、二つの実とヘタが左に飛び出している。まるで、グレン・グールドの弾くマルチェルロのイタリアン協奏曲のような、静かな詩情に込められた躍動感を感じる。


とても贅沢な時間を過ごした後のゆったりとした充足感とともに、ミュゼを後にした。

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