第1回 Enrico Macias・Solenzara その5(最終回) アンダルシア古典音楽とフランス現代音楽の融合
▢「Musique Arabo-Andalouse」・Atrium Musicae Madrid のレコード・ジャケットより
アンダルシア古典音楽
アラブ・アンダルース音楽は、9世紀にアッバス朝バクダットからこの地に来た宮廷音楽家ズィルヤーブ(Zyryab)に始まり、レコンキスタ(1942年国土回復運動)までの間700年以上、スペイン・アンダルシア地方で発展していた。
レコンキスタ以後、イベリア半島から北アフリカに難民化して渡ったイスラム教徒たちによってマグレム(:Maghrebーアルジェリア・リビア・モーリタニア・モロッコ・チュニジア)全体に広がり、様々な変化を遂げながら各国で継承されている。マルーフ(Malouf)はその正統的な継承音楽と言われ、イスラム教徒とユダヤ教徒の音楽家たちによって完成された。
基本的な音楽編成は、ウード(琵琶や三味線のような撥弦楽器)・カヌーン(琴のような撥弦楽器)・ギター・ナーイ(縦笛)・ズルナ(打楽器)・タンプリンなど、そしてアラビア語の唄。
E.マシアスは、1999年に「Enrico Macias Hommage à Cheikh Raymond」というタイトルのCDをリリースし、義父のC.Raymondへのオマージュとしてマルーフ(アンダルシア古典音楽)の楽団と共演し、ギター演奏とアラビア語の唄で再演の念願を果たしている。
Bing 動画 (マシアスの演奏)
「Enrico Macias Hommage à Cheikh Raymond」ー 早弾きのギターソロ演奏(前半)とマルーフ独特な節回しの唱法(後半)が視聴できます(上の色タイトルをクリック)。
また、スぺインの音楽とダンス芸術の「フラメンコ」はアンダルシア地方で生まれたもので、アンダルシアの土着文化(アラブ的な)とジプシー(ロマ民族)の文化が交錯し融合したもの。音楽(ギター)とダンスと唄が一体化した結果、人生の喜びと悲しみ・苦悩と愛を表現する総合芸術となっている。
ギター演奏の力強いストロー・早いアルペジオ・複雑なコード進行は、マシアスにその超絶的な技法が受け継がれていて、マシアス音楽のオリジナリティとなっている。
マシアスの音楽的特徴はーフランス現代音楽との融合
① アンダルシア古典音楽の継承と、スペイン・フラメンコギターの魅力
② イスラム教の礼拝時に、アザーン(呼びかけ人)によって詠唱される祈りの節回しの様な、西洋音階にない微分音階(半音づつの変化)の唱法は、マシアス独特のもの。フラメンコギターと相まって、人生の喜びや深い悲しみ・身を切る苦悩や尊い愛などが聴く人の心に深く語りかけている。
▢イスラム:アザーン(Adham)の響き ー祈りの独得な節回し(上の色タイトル・クリック)・画像は Muhamad Biography より。
③ 歌詞のフランス語(シャンソン)と、有能なブレーン(作詞家・編曲家・レコードプロデューサーなど)が手掛けた現代的な音楽表現により、彼の歌はメロディやリズム・アレンジも上質で分かり易い仕上がりとなっている。世界の多くの国でのコンサート、10か国語に渡る言語での歌唱など、これが、ワールド・ミュージックとしてヒット曲を続けられた要因だろう。
師(義父でもある)が夢見た「イスラム教とユダヤ教とキリスト教の共生」のテーマは、マシアスにも引き継がれていて、西洋文化の中に身を置きながら、アラビアン音楽とフラメンコとの融合を目指す姿勢が、彼のアイデンティティであると言えよう。
<参考資料>
Wikipedia フリー百科事典「Enrico Macias」
エンリコ・マシアスの素晴らしき世界 ブログサイト名
https://www.enrico macias.net





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