2012年6月27日水曜日

第2回 ザ・タペストリー ライブ(その② 1stステージ)


メンバーたちの乗りがよいのを感じながら演奏するヨッシーとTAKA  All Photo by K.Nakazawa

1stステージは、「All of Me わたしのすべてを」で始まった。このポピュラーなジャズナンバーは、第1回のライブでも演奏した曲だが、マッキーのサックスが心地よく響き、私の歌も滑らか、3廻し目のバンジョー・ソロ(ヨッシー)もリズムに乗って、とてもよい滑り出しだった。さほど緊張感もなく、今夜のライブが楽しくいける予感がした。
続いては、QP村山の゛歌ドラ゛(歌うドラマー)による「Unchain My Heart 俺の心を解き放ってくれ」、このR and Bの名曲を彼はドラムをパワフルに叩きながら歌った。自分のレパートリーとして何度も歌っているので、スムースだ。イントロのサックスとベースの入りも良かったし、ヨッシーと私のコーラスもきれいに入った。
歌と演奏が終わると、「ブラボー、村山!」の声がかかり、客席も乗ってきた。

皆の歌と演奏を聴きながら、私はスピーカーから流れている音にも耳を傾けていた。この会場はレストランとは言えスペースに合った音響機材が整っているし、PAコントロールに専任のスタッフが付くので、マイクやアンプの音バランス、ドラムやサックスの生音とヴォーカルのバランスも、かなり微調整できる。この夜はギタリストの中畑さんが付いてくれたので、安心して調整をおまかせすることができた。私の使っているギター用の小型コンデンサーマイクも、大音量だとハウリングが起きやすく、何時もライブハウスでは神経を使うのだが、この夜はその心配も少なく、歌い演奏しているメンバーたちも全体の音バランスがいいのを感じて、だんだん乗りがよくなっていった。



QP村山の゛歌ドラ゛に、マッキー(As)のカウンター・メロディとベース(AYA)が掛け合いとなり、客席は大いに沸いた。

この辺りから、ヨッシーのMCも調子が乗ってきた。Bj 弾き語りのカントリー・ソング・「Bill Bailey ビル・ベイリー」(ダメ亭主をおん出したものの、お願いだから家へ帰って来ておくれと嘆く女房の歌)を紹介するのに、「ダメ亭主の反省を込めて歌います!」と言って、客席をどっと沸かした。ヨッシーの゛歌バン゛(歌うバンジョー弾き)に客席からの手拍子で歌も盛りあがり、途中のBj ソロも上手く入って、ヨッシーの演奏上達振りを大いにアピールした。

次は、AYAさんの゛歌べー゛(歌うベース弾き)で、ハワイアン・ラブバラードから「Ahi Wela 愛の炎」を。このゆったりとしたバラードを生かすのに、私はアルペジオのリズムを刻んでギター伴奏し、ドラムのソフトスティック音にカバサのシャキシャキ音が重なり、マッキーのサックス・低音ハモリと私の歌・高音ハモリが重なり、全体として膨らみのある音構成の中で、AYAさんの澄んだ声が響き渡った。歌い終わると、「アヤちゃん!」声が客席からかかった。

客席の熱気が伝わってくる中で、「Stella by Starlight 星影のステラ」が紹介された。この曲はジャズ・スタンダードでも人気の高い曲で、マッキーのサックスとアドリブ演奏が生きる曲だ。今回のライブでは、゛Jazz Bossa゛(ジャズとボサノヴァを融合したアレンジ曲)のナンバーを3曲入れている。このラインは、バンド結成以来の課題で、マッキーのジャズと私のボサノヴァを上手くかみ合わせた表現をしたいと思い、ただカバーをするのではなく、ボサノヴァの和音コードとリズムに乗せて、サックス・ソロを思いっきり吹いてもらおうとのアレンジだった。

ジャズ・ボッサには、ジョアン・ジルベルト(歌とボサノヴァ・ギター)とスタン・ゲッツ(サックス)が共演した『Getz / Gilberto』(1963年)という名盤がある。ほとんどがトム・ジョビン(アントニオ・カルロス・ジョビン)の曲で、ピアノ演奏とアレンジも彼の手による。このアルバムの中から、アストラット・ジルベルトが加わって英語でも歌った「イパネマの娘」の世界的ヒットが生まれている。トム・ジョビンは、このアルバムのテーマを「ジャズのインプロビゼーション(アドリブのこと)」と位置づけ、商業的にはわかり易い゛Jazz Bossa゛のタイトルがつけられた。世界中に流れたこの曲でボサノヴァを知る人も多い。

「星影のステラ」の構成は、イントロGtに続き、サックスのテーマ演奏ーVo/Gtの歌ーサックスのアドリブ演奏ーそしVo/Gtの歌に戻って終わる。サックス主役の3廻し半だが、押さえたドラミング・カバサの柔らかなリズム・ベースの低音がリズム隊となり、歌と演奏をささえる゛大人味゛の曲だ。ただの乗りでは決してこなせない、スローテンポのバラードだ。実は、こういう曲が一番難しい。演奏との実力がはっきりとわかってしまうからだ。

この夜のマッキーは冴えていた。Asの柔らかで艶のある音が良く出ていた。ギターを伴奏しながら歌う私も、空中に浮遊するような酩酊感に包まれていた。エンディングのサックス・ソロが終わると、会場は盛大な拍手と歓声に包まれた。゛Jazz Bossa゛が、今宵のリスナーに受け入れられたのを感じ、私の顔には悦びが溢れた。

熱演するマッキー(As)、左はQP村山(Dr)

(この項続く)

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